2期連続の赤字から価格転嫁に成功!金属加工業の「見えていなかった数字」が会社を変えた。─フォーバル企業ドクターが語る、10年越しの伴走支援──
「価格を上げたい。でも、切られたらおしまいだ。」
そう思って、何年も動けなかった社長がいます。
覚悟がなかったからではありません。動くための”根拠”が、手元になかったからです。
この事例は「中小価格転嫁の成功事例」として日経新聞にも取り上げられました。
今回はそんな神奈川の金属加工業、株式会社キョーワハーツ様の「事業再生から承継まで」を担当、支援した2名の企業ドクターに話を聞きました。
【この記事を読むと分かること】
- 価格転嫁できない中小企業が、陥りがちな「わからない」の正体
- 現場を巻き込んで経営改善を進める重要性
- 企業ドクターが課題に向き合うために大切にしていること
今回話を聞いた2人
阿久澤(企業ドクター)

入社3年目までは企業のかかりつけ担当として幅広くお客様をサポート。4年目からはより専門性の高いコンサルタント職(企業ドクター)にキャリアを移し、現在は「収益力改善・赤字脱却」をテーマに、特に重要度の高い企業を担当している。今回担当したキョーワハーツ様の支援事例はフォーバル社内コンテストで全国1位を獲得した。
白鳥(企業ドクター)

フォーバル歴19年。横浜・関内エリアを中心に、IT環境整備から経営支援まで一貫して担当するかかりつけ医のような存在。キョーワハーツ様とは10年以上の付き合いを持つ。
1. 何が悪いかは知っていた。それでも改善できなかった理由。
インタビュア:
「関わり始めた当初、キョーワハーツ様はどんな状況でしたか?」
阿久澤:
「価格転嫁などの対策の必要性は、社長ご自身も感じていらっしゃいました。ただ、実際に動き出すことがなかなかできていなくて。新しい取り組みを始めても、それが一時的な対応で終わってしまうところに課題がありました。
製造業ならではの構造として、経営層は変えなければと思っていても、現場にその意識が共有されていないと、取り組みを会社全体で進めることって難しいんですよね。そういった状況からのスタートでした。」
「まず決算書を確認すると、売上の減少が確認できました。コロナ禍で主要取引先が在庫を抱えない方針に切り替えたことによる受注減と、価格競争が重なっていて、また、原価率も徐々に悪化している状況でした。」
2. ”売上を戻す”より先に、やるべきこと。
インタビュア:
「売上が落ちている話と、原価率が悪化している話が出てきましたが、中小企業の経営者だと売上を回復させようというところに目が行きがちなケースも多いと思うんです。
今回はどういう判断で、まずは利益率の改善の方に着手しようと思ったんですか?」
阿久澤:
「決算書から見えた金額や数字を、社長と一緒に見ながら会話する中で、社長の感覚と実際の数字が合わない箇所が見えてきたんです。
より深く聞いていくと『製品ごとの粗利率が全く見えていない』ということが分かってきました。そこで『これは売上の減少よりも先に、数字が確認できる状態にしたほうが良い』と判断しました。
原価が上がり続けているので価格転嫁の必要性は強く感じていたんですが、その価格転嫁を成功させるためにも、まず根拠として正確なデータが絶対に必要なので。」
インタビュア:
「実際に原価を可視化してみて、何が出てきましたか?」
阿久澤:
「社長の想定以上に粗利率が悪い製品が、いくつか出てきました。なぜ今まで対策していなかったのかを確認すると、『ここまで可視化したことがなかったから、対策の仕方自体がわからなかった』とおっしゃっていて。」
インタビュア:
「つまり、社長ご自身も「感覚」と「実際の数字」にこれほどのズレがあることに気づいていなかったと。」
阿久澤:
「そうなんです。中でも特にズレが大きかったのが粗利率の部分で、『もしかしたらここに課題が眠っているかも知れない』という感覚が、実際に深掘りしてみたら、大きな利益改善の余地として確信になったというか。経営数字の可視化と、寄り添った形の問診と、対話。この三つが揃って初めて見えてきたような課題だったと思います。」

感覚で「これは儲かっている」と思っていた仕事が、実は赤字に近い。データを開けて初めて見える現実でした。
この課題を「ちゃんと数字で見える状態」にすること、つまり、改善をスタートさせる手前の「基盤を整える」ところから、企業ドクターの仕事は始まります。
3. 現場が動かなければ、数字は変わらない
製造業の原価把握には、現場の協力が欠かせません。機械の稼働時間や工数——いわゆる「チャージ費」を算出するには、現場スタッフに時間集計をお願いしなければならず、一般的には追加作業への抵抗感も出やすい場面です。
キョーワハーツ様ではどう乗り越えたのか。
インタビュア:
「現場を巻き込むのに、苦労はありましたか?」
阿久澤:
「今回は、工場長が率先して動いてくれたんです。現場でも『ずっと値段が変わっていないのはおかしいんじゃないか』という感覚を持っていらして、工場長がその問題意識を持って現場を束ねてくれました。
私が関わり始めてから、月次の数字を工場長も含めた幹部と共有する場を毎月設けるようにしたのも大きかったと思います。会社の状況をオープンにして、共通の目標意識を持ってもらう。現状を正直に共有することで、経営課題が『自分たちの問題』として現場にも伝わっていった。それが工場長の動きに繋がったんだと思います。」
「コンサルティングに一番重要だと思っているのは、現場の人たちを巻き込むことなんですよ。巻き込むためには共通の状況認識が必要で、それが毎月の数字の共有によって醸成されていく、という感覚があります。」
4. データが、担当者を動かす
インタビュア:
「取引先への価格交渉は、どう進めたのでしょうか?」
阿久澤:
「価格交渉の担当者が経営者とは限りません。担当者の言葉で上に話を上げると、どうしてもニュアンスがブレてしまうことがあります。
なので、原価表をそのまま渡して、『このデータを持って話してください』という形にしました。
誰が話しても同じ根拠・同じ熱量で交渉できる状態を作ることが大事だと考えていて。当時はちょうど、下請け振興法の観点から価格交渉に応じないことへの牽制が強まっていたタイミングでもあったので、取引先の理解は比較的得やすい環境でした。」
「原価の可視化には2ヶ月くらいかかりました。3ヶ月目以降には交渉を開始できるようにして、早いところでは翌月から単価が変わっていました。最初の可視化フェーズから数えると、半年以内に数字として結果が出せたような形になります。」

価格転嫁の問題は、日本の中小企業が広く抱える構造的な課題でもあります。
中小企業庁の調査では、価格転嫁を「十分にできた」と回答した中小企業は全体で2割を下回り、コスト上昇分を価格に反映できないまま自社で吸収しているケースが大半を占めています。
「切られたら終わり」という恐れから交渉が消極的になり、根拠のないまま価格が何年も変わらない——この構図は、キョーワハーツ様だけの話ではありません。
だからこそ、「数字を揃えて交渉する」というアプローチが持つ意味は大きいのです。感覚ではなくデータで話せるようになったとき、初めて対等な交渉のテーブルに立てる。それを証明するような成功例と言えます。
5. 10年の積み上げが事業承継の後押しに。
ここからは、前任から引き継いで10年以上、キョーワハーツ様と向き合ってきた白鳥の話です。
キョーワハーツ様とフォーバルの最初の接点はIT環境の整備でした。機器の管理から、システムの導入支援、日常的なITのトラブル対応まで、お客様のIT面を広く継続的に支える「IT担当のかかりつけ医」のようなイメージです。
そこから定期訪問を重ね、財務分析、DX支援へと関わりを広げてきた。その信頼の積み重ねが、事業承継という会社にとって最も重要な局面で、大きな意味を持ちました。
インタビュア:
「10年の付き合いの中で、どんなことを大切にしてきましたか?」
白鳥:
「毎月必ず伺うようにしていましたね。当時は1日に5〜6件の企業訪問をしていたこともあって、その積み重ねの中で「ちょうど来てくれたから、ちょっと聞いてもいい?」という相談が自然に生まれてくる。そういう関係性の作り方をしていました。
訪問では機器の状態確認から始めるんですが、その時に経営者様だけではなく、現場で働いていらっしゃるスタッフの方にも声をかけることも意識していました。経営者側まで上がってこないような現場の課題が出てくることも多いので。」
インタビュア:
「そこから、どうやって経営全般の相談をいただけるようになったのですか?」
白鳥:
「フォーバルとして財務分析のフィードバックの取り組みや、中小企業支援の国の制度(デジタル化応援隊)の活用支援を始めたタイミングで、キョーワハーツ様にもそういった取り組みをご紹介したことが大きな転換点でした。
このときの応援隊の支援では、長年使われてきた販売管理システムの刷新をお手伝いしました。属人化していたシステムが更新できない状況があって、これは課題だと感じてご提案しました。その時導入したシステムは、現在も使っていただいています。そこから、単なるIT対応を超えた、より経営に踏み込んだ関わり方ができるようになりました。」
インタビュア:
「事業承継の局面では、どう関わりましたか?」
白鳥:
「後継者への引き継ぎが思うように進まない時期があって、社内の事情もあって社長が難しい判断を迫られていました。その時に、『今できる準備を整えておくことが、後継者が戻られた時により良い状態でスタートできることに繋がるんじゃないか』とご提案したんです。3〜4ヶ月くらい悩まれていらっしゃいましたが、最終的に『これまでの付き合いを信じて、任せてみよう』というお言葉をいただいた時は、本当にうれしかったですね。」

フォーバルへの10年越しの信頼が、その一言に凝縮されていました。
6. 「お客様が動いてくれない」は、言い訳にしない
インタビュア:
「お二人が、企業ドクターとして、一番大切にしていることを教えてください。」
阿久澤:

「『聖域なし』というのが、自分の中で一番大事にしている言葉です。会社の中には、お互いに触れにくいテーマというのがどうしてもあります。でもそこを避けていると、本質的な課題には向き合えない。
嫌われる勇気じゃないですけど、本質的に課題に踏み込むとなった時は、お互い不可侵領域を作らないっていうのが必要かなと思っています。
もう一つは、お客様が動けていないのは、自分の実行推進力が足りていないから、という前提を持つようにしていて、どうすれば社長が動きやすくなるのかと常に自分に問いかけています。
コンサルタントというと、答えを持ってきて『あとは任せた』というイメージを持たれることもありますが、私たち企業ドクターは、会社が実際に良くなることにコミットする存在でありたい。可視化や分析はあくまで手段なので。」
白鳥:

「僕の場合はもうレスポンスの速さですね。これはもう一貫して、自分の中で一番大事にしていることです。
たとえ解決策がすぐに出せない時でも、『確認しています、今こういう状況です』という一報を入れるだけでも、お客様の不安は大きく変わりますから。
誰でも出来ることなんですけど、こういう基本的なところを大事にするからこそ、お客様の信頼に繋がってると思っていて。キョーワハーツ様の場合も、もし信頼がなかったら今回の支援まで繋がっていないと思うんです。」
7. この記事を読んでいる経営者様へ
キョーワハーツ様の話は、特別なケースではありません。
「製品ごとの粗利が見えていない」「価格を変えたいが根拠がない」
——こう感じている会社は、業種を問わず全国に存在します。
一つだけ確認していただきたいことがあります。
会社の製品・サービスごとの粗利率を従業員から聞かれたら、正しく説明できますでしょうか?
「なんとなくわかる」と「データで見えている」の間には、大きな差があります。キョーワハーツ様の事例も、その差が利益を変えました。
もし同じ悩みをお持ちであれば、出来るところから、まずは一つの製品・サービスを選んで、原価を書き出してみてください。材料費、外注費、作業時間——その数字が正確でなくても、「把握できていない項目がある」と気づくことが、最初の一歩です。その気づきが、交渉の根拠をつくり、会社を動かし始めます。
フォーバルの「可視化伴走支援」でできること
フォーバルでは、財務・原価・IT環境など、経営に関わるデータを一緒に整理しながら「見えていなかった課題」を可視化する支援を行っています。答えを押しつけるのではなく、社長と一緒に考え、ともに動きやすい状態を作っていくような活動です。
- 売上は横ばいなのに、なぜか利益が残らない
- 価格を上げたいが、どう交渉すればいいかわからない
- 後継者への引き継ぎを進めたいが、何から手をつければいいかわからない
こんな悩みがあれば、一度フォーバルへご相談ください。
必要な取り組みの整理から理想の組織体制づくりまで、ともに横で走りながら、実行のお手伝いをさせて頂きます。
🎥 実際のキョーワハーツ様の改善事例を映像でもご覧いただけます
記事では伝えきれなかった、リアルな現場の空気感や取り組みがわかる内容になっています。
▶️ インタビュー動画を視聴する(限定公開)