【明星大学連携】中島教授 学生に必要なのは「リアルな経営体験」
明星大学 中島教授が語る、日野市エリアでの産官学連携が生み出す学びの価値
はじめに-今回のプロジェクト説明
フォーバルが推進する「F-Japan構想」は、産・官・学・金と連携し、地域に必要な人材を育て、その人材が地元企業の課題解決を支えることで、地域経済の活性化を目指す取り組みです。
その実践の一つとして、東京都日野市では、明星大学経営学部、日野市、地域企業、そしてフォーバルが連携し、「日野市の未来を創る学生による市内事業者支援プロジェクト」が始動しました。
本プロジェクトでは、学生たちが日野市内の事業者のリアルな経営課題に向き合い、フォーバルの企業ドクター(※1)とともに、企業の現状を可視化し、課題を整理し、解決策を考えていきます。
※1 企業ドクター:フォーバルで「企業の病気(課題)を治す人」と定義された職業。
今回お話を伺ったのは、明星大学経営学部の中島洋行教授です。
学生に「リアルな経営に触れてほしい」という思いを持ち、日頃から実践型のゼミ活動に取り組んでいます。
大学にとって地域企業と連携することにはどのような意味があるのか。学生は、中小企業の経営者と向き合うことで何を学ぶのか。そして、フォーバルの企業ドクターは、産官学連携の中でどのような役割を果たしているのか。
未来人材育成、地域課題解決、産官学連携の可能性について伺いました。

プロフィール
中島 洋行 教授
明星大学 経営学部 学科主任・教授。専門分野は会計学。主な担当科目は、業績評価会計、原価計算論、会計学概論、応用簿記。管理会計や原価計算を中心に、企業の経営活動を会計情報から考察する教育に取り組んでいる。
この記事で伝えたいこと
今回紹介する大学から見た産官学連携の価値は、学生が地域企業のリアルな経営課題に向き合い、学びを実践に変えることです。そして、その場を動かす旗振り役である「伴走者」がいることで、大学・企業・自治体それぞれに意味のある取り組みになります。
1. 学生に必要なのは、知識に裏付けられた「リアルな経営体験」
ビジネスプランで終わらせず、作る・売る・利益を出す現実に向き合う
—— 中島ゼミでは、普段どのようなことを大切にされていますか。
中島教授:
「私がゼミの中でやりたいことは、知識に裏付けられた『リアルな経営体験』です。
これまでは、八王子市内のレンタル店舗を借りて、商品企画から量産、販売という一連の経営活動を体験する活動を実施してきました。リアルにものを作り、知らない人へ売る、というような経験を通じて、ものづくりのやりがいや大変さを知ってほしいと思っています。
経営学を学ぶ学生には、座学だけではなく、座学で学んだ知識に裏付けられた『リアルな経営体験』をしてほしいんです。」
—— プランを考えるだけではなく、実際にやってみることを重視されているのですね。
中島教授:
「はい、現在多くの大学ではビジネスプランを作る講座が流行っています。ビジネスプランを作ることにもちろん意義はあるのですが、基本的にプランを立てるだけで、それを実行して、起業につながることはほとんどありません。
私もビジネスプランのコンテストの審査員を務めたことがありますが、『売上が2倍ずつ増えているのにコストはほとんど変わらない』など、どうしても現実離れしているような、ありえないだろうみたいなプランも結構多いんですよ。
だから、ゼミでは実際に作って売るという活動を行っています。
まず同じものを150個、同じクオリティで作るのがいかに大変かっていうのもわかるし、自分たちの人件費も考えたら、利益を出すのってすごく大変だとわかると思うんですね。なので、実体験に基づいてビジネスのやりがいと厳しさを勉強してほしいなと思っています。」
—— 今回のプロジェクトのように、学生が中小企業の経営課題に触れることには、どのような価値がありますか。
中島教授:
「実際の企業の事例を扱うわけですよね。これはすごく価値があると思います。
中小企業経営者の声を聞き、財務や非財務に関するデータをどう解釈するかまで含めて、机上の空論で終わらないビジネスプランを考える貴重な機会です。
『企業と大学がコラボしました』という取り組み自体はよくあります。例えば『学生の意見を聞いて、地域の特産品を使いながら新商品のパンを作りました』のような。 あれは1回だけやって終わりのことが多いですし、経営課題に対しての取り組みじゃないことが多いですよね。
今回のプロジェクトを通じて、もっと企業経営の根幹に関わる議論をしてほしいんです。大学生が中小企業の社長と話すってことは、なかなかないと思います。講演を聞くんじゃなくて、意見交換するって機会はないですもんね。」

2. 大学だけでは届きにくい地域企業との接点を、第三者機関であるフォーバルが繋ぐ
「何かできたらいいよね」で終わらせないために、旗振り役が必要だった
—— 大学として、地域企業と連携することにはどのような難しさがありますか。
中島教授:
「明星大学では、『多摩に根差し、地域に貢献する大学』というビジョンを掲げています。ただ、じゃあ具体的に多摩地域で何をするかとなると難しい問題です。
明星大学ではこれまで多摩地域で大学と地域が連携して様々な活動を行って、成果を出してきましたが、多摩地域の中小企業と大学との取り組みになると、なかなか大学単独ではできないことが多いです。
多摩地域の中小企業と何か連携したいと思っても、そもそも大学には個々の中小企業にアクセスできる手段が乏しいので、はじめにどこに声を掛ければいいのかがわからない。
今回のような取り組みを、市が率先して行うことで、大学側も参加しやすくなったと思います。」
—— その中で、フォーバルが関わる意味をどのように感じていますか。
中島教授:
「今回はフォーバルさんが市から事業を受託し、我々に伴走してくれる形になっているわけですよね。市の援助を得て、地域の企業と学生が繋がる場を作る意義は、非常に大きいと思います。 旗振りする方がいないと、『何かやれたらいいよね』と思ったとしても、そのまま何も解決しないで立ち消えになることが多いので。
地域の企業との接点は簡単には作れません。特に学生主体の取り組みであればなおさらです。
地域企業と地域の大学の接点を実現できることが、この取り組みの大きな魅力だと思います。フォーバルさんが関わっていることで、『リアルな学びの場』が実現できていると感じます。」

3. 経営者と企業ドクターに向き合うことで、学生の学びが自分ごとになる
経営者の声を聞き、支援の現場を見ることで、学生の真剣度が変わる
—— 実際に取り組んだ学生には、どのような変化がありましたか。
中島教授:
「2025年度に本プロジェクトに取り組んだ学生の変化としては、訪問の回数を重ねるごとに、支援企業が抱える問題を自分たちの問題であるかのように真剣に議論を重ねるようになっていきました。
企業訪問と並行して財務諸表の分析も行ったため、どのような経営状態であるかはある程度わかりましたが、実際に経営者と対話を重ねる中で、経営改善に向けた取り組みは決して他人事ではないことを理解し、議論の質も高まっていたように感じられました。」
—— その中で企業ドクター(経営の伴走支援者)に同行することには、どのような価値がありますか。
中島教授:
「企業ドクターと同行するっていうのも、なかなかない機会です。実際、仕事ぶりを生で見られるというのは非常に価値があると思います。
インターンシップでも、訪問同行することはあるかもしれないですけど、ずっと一緒にいるわけじゃないですし、あくまでも同席するだけですが、このプロジェクトではどちらかというと学生が主に経営者と対話し、企業ドクターはそのサポートに回るという特徴があります。言葉のやり取りだけじゃなくて、体感して、感じて、学びが深まるっていうところまで行けると思っています。
2025年度に本プロジェクトを体験したゼミ学生から、フォーバルさんに入社して企業ドクターを目指す学生が複数名出ることになりまして、企業ドクターの輩出に貢献できたのもよかったですね。」

4. 実践型ゼミだからこそ育つ、知識を活用できる力と人間的魅力
学んだことを現場で使い、「この人と働きたい」と思われる学生へ
—— このプロジェクトを通じて、学生にはどのような力を身につけてほしいですか。
中島教授:
「教室の授業で経営学や会計学に関する知識は学んでいるので、それをプロジェクトの中で活かしてほしいですね。いろんな知識、例えばSWOT分析やCVP分析とか、そういうものがプロジェクトの議論の中で自然な言語として出てきてほしいです。知識を実践の場で活用することをぜひやってほしいと思っています。
それができるのは、このようなプロジェクトならではのことだと思います。 学びを実践できる機会って、大学の通常講義の中ではなかなかないですから。」
—— ゼミを通して学生にはどのような人材になってほしいですか。
中島教授:
「まずは『人間的魅力』を身につけてほしいと考えています。例えば採用でも、ぱっと見て『なんとなくこの人を取りたい』と思うことってあるじゃないですか。そういったその人自身のありのままの人間性を感じてもらうことは大事だということを学生にも言っています。
正直うちのゼミは、学年の成績トップばかりが集まっているゼミではないんですよ。だけど、就活の際の評価や、学外の方からの評価は高いんです。
これまで卒業したゼミ学生(株式会社フォーバルと明星大学経営学部中島ゼミが最初に提携を始めた学年)は、就職実績も抜群によくて、ほぼ全員が希望通りの就職先を実現できました。
ゼミでは就活対策もかなり力を入れてやっていますし、こういう実践的な活動をしているからこそ面接で言えることはいっぱいあると思います。その体験を面接官へ簡潔明瞭に伝えられるよう指導しています。
さらに新入社員代表の挨拶に選ばれた、というのも結構あるんです。やっぱり人事の方も、同じ新入社員の中でも『この人は』というものを感じるんだと思います。」
5. 中小企業に必要なのは、経営を身近に診てくれる「かかりつけ医」
税理士だけでは踏み込みにくい、売上・採用・IT活用まで見てくれる存在
—— フォーバルの「企業ドクター」という役割について、どのような印象を持たれましたか。
中島教授:
「以前から中小企業の経営者の方に話を伺う機会は多くありますが、経営者が気軽に相談できる仕組みが必要だと感じていました。
中小企業の経営者が、相談できるとすれば税理士か信用金庫になっちゃうと思うんです。ただ、税理士の先生は顧問税理士としているけれど、普通は巡回監査で月1回来るだけだし、信用金庫も融資を受けていなかったり、今後融資を受ける予定がなければなかなか相談しにくいと思います。そうすると、なかなか経営改善に踏み込んだところまで、アドバイスを受けることにはならない。
今、ITやAIの深化で、税理士も記帳代行だけではなくコンサルをやらないと食べていけないって言われてますけど、やっぱりどうしても会計的な面からのアドバイスが中心にならざるを得ませんよね。
『もうちょっと売上増やしたいですね』と言われても、どう経営改善して、売上を増やすのってなったら、それは具体的に教えてもらえるとは限らないし、手取り足取りというわけにもなかなかいかない。
もう少し身近な存在で、企業ドクターがいるってことは、経営者にとっても非常に心強いです。専門医じゃなくて、気軽に相談できる『かかりつけ医』と言っている表現が相応しくて、その役割がすごく大事だと思います。」

6. 産官学連携から得られること
これから連携を考えている方へ
—— 最後に、地域企業や、これから産官学連携に取り組む関係者に伝えたいことはありますか。
中島教授:
「こういう機会があるならば、それはやっぱり経営学を勉強する上で、学生にとって非常に有益な機会になります。教室では絶対に学べないことを学ぶチャンスです。
企業側としては、学生の言っていることは実際大したことないだろうと思うかもしれないんですが、その企業と全然関係ない立場だからこそ言えることとか、異なる世代の視点からの話だからこそ気づくことってあると思うんです。企業側にとってもこのプロジェクトに参加するメリットは十分にありますね。
これまで訪問した企業ですと、特に採用目線を期待される会社が多いですね。同年代の学生が、例えば『うちのウェブサイトを見てどう思うか』とか、『採用に関して就活世代はどう感じるか』とか、そういうことを聞ける機会に繋がるというのはあります。」

まとめ
明星大学経営学部の中島ゼミが大切にしているのは、学生に「リアルな経営」を経験する機会を提供することです。実際に中小企業の経営者と対話し、企業ドクターの支援現場に触れ、社長の悩みや地域企業の課題に向き合う。その経験は、座学だけでは得られない学びを学生にもたらします。
一方で、大学だけでは地域企業との接点を作ることは簡単ではありません。行政だけでも、企業だけでも、大学だけでも、継続的な取り組みにすることは難しい。
だからこそ、フォーバルは、地域企業の課題を可視化し、行政や大学とつなぎ、主体的にプロジェクトを動かす役割を担います。
産官学連携は、関係者が集まるだけでは動きません。地域企業のリアルな課題に向き合い、学生の学びに変え、企業の変化につなげていくためには、旗振り役と伴走者が必要です。
フォーバルのF-Japan構想は、まさにその仕組みを地域に実装していく取り組みです。
学生にとっては、未来人材として成長する機会に。
大学にとっては、地域と繋がる実践教育の場に。
地域企業にとっては、若い視点と企業ドクターの伴走支援を得る機会に。
自治体にとっては、地域経済を支える人材と企業を育てる仕組みに。
明星大学経営学部での取り組みは、未来人材育成と地域課題解決をつなぐ、産官学連携の新しい形を示しています。
取材協力
明星大学 経営学部 中島洋行 教授
https://www.meisei-u.ac.jp/index.html
取材・文:フォーバルカンパニーサイト編集部