この記事を読むとわかること
- 外から見たフォーバルの中小企業支援は、一般的なコンサルティングとどう違うのか
- 商学を学ぶ学生にとって、中小企業の現場がどんな学びをもたらすのか
- 地元の人材が地元企業で活躍する「地産地消」モデルの可能性
- 大学とフォーバルの連携がどのような形で進んでいるか
インタビュー先プロフィール

1. 「コンサルとは、違う」——現場で感じた経営伴走支援の正体
横浜商科大学の講師、西村先生が、フォーバルの中小企業支援の現場に同行する機会がありました。
実際に企業ドクターがクライアントの社長と向き合う場に立ち会い、そこで先生が口にしたのは「そこまでやるんですね」という一言。その言葉の背景には何があったのか話を聞きました。
インタビュアー:
「『そこまでやるんですね』と仰っていただきましたが、どのような点でそのように感じられましたか?」
西村先生:
「たとえば、同行させていただいた現場では、チームビルディングについて一緒に考えたり、パーパス(目的)の設定にともに向き合ったりされていました。また、数字を一つひとつ丁寧に見ながら、『ここは削った方がいい』と話される場面もありました。まるでその会社の一員であるかのように深く関わっておられて、手間のかけ方という意味でも、踏み込みの深さという意味でも、『そこまでやるんですね』と感じました。」
インタビュアー:
「現場に同行した、率直な感想としてはいかがでしたか。」
西村先生:
「皆さんとても心地のよい雰囲気で、クライアントの方とお話しされている時もリラックスした様子が印象的でした。中小企業の社長を支援するというのは、外部の立場から課題を示したり、専門的な知見を提供したりする、いわゆるコンサルタントのイメージとはまた少し違って、社長に寄り添い、同じ目線で一緒に考えていくような支援なのだなということを、強く実感しました。
特に、2年、3年という長い時間をかけて関わっていくこと、そして社長に脅威と感じられないような関係を築くことが、とても大切なのだと感じましたね。」
2. 社長が「脅威に思わない」支援者とは何か
インタビュアー:
「一般的なコンサルタントのイメージと、フォーバルの支援は具体的にどう違いましたか。」
西村先生:
「コンサルタントには、言いづらいことや、社長ご自身が必ずしも求めていないことであっても、必要だと判断すれば、率直にお伝えする場面があると思います。それは、外部の立場から会社の課題や成果に向き合う役割を担っているからこそ生まれる関係性なのだと思います。
一方で、中小企業の社長にとっては、会社に対する説明責任や経営そのものが、ご自身の生き方と強く結びついていることも多いのではないかと思うんです。人生と経営を切り離しにくいからこそ、悩みを一人で抱えやすい。そうした社長に寄り添いながら、一緒に考え、長く伴走していくという支援のあり方があるのだと、今日とても勉強させていただきました。」
「経営が社長の人生と一体化している」——大企業の経営とはまったく違う距離感が、中小企業支援の特徴だ。
3. 学生がおとなしくなった時代に、大学が渡すべきもの
話題は、現在の学生気質と大学教育の変化へと移ります。
インタビュアー:
「少子高齢化、コロナ禍、AIの台頭など、この5〜10年でいろいろな変化がありましたよね。先生の目線から、学生や大学教育はどう変わってきていますか。」
西村先生:
「全体的な傾向としては、年々、真面目で落ち着いた学生が増えているように感じます。現在は就職市場も比較的学生に有利な状況が続いているため、『普通に大学に通って勉強していれば、就職できるだろう』という感覚があるのか、就職や将来に対する切迫感は、以前ほど強くない印象がありますね。
もちろん個人差はありますし、何らかの原体験や明確な目標があって、意欲的に行動している学生もいます。ただ、全体的な傾向として見ると、そうした学生はそれほど多くないように感じています。」
インタビュアー:
「そういった学生さんたちを、どのような状態で卒業させるのが大学のミッションになっているのでしょうか。」
西村先生:
「個人的には、大学で学ぶことは、多くの人にとって人生の中でも一度きりの貴重な機会だと思っているんです。時間もお金もかかりますし、だからこそ、大学にいる間にめいっぱい学んでほしいと思っています。
うちは商学部ですので、卒業後には、大学で得た実践的な学びを活かして、社会で活躍できる人になってほしいと思っています。ただ一方で、実践だけに偏るのではなく、物事を深く考える力や、自律的に知識を追い求めていく姿勢も必要だと思うんですよね。
深く考え、自分で判断し、行動するための『作法』のようなものを、大学でしっかりと身につけることも大切だと思っています。それは、大学教育が本来大切にしてきたことの一つでもあると思うんです。」

4. AIで答えが出ても、「自分のもの」になっていないとしたら
AI活用が広がる世の中で、自律的に深く考える『作法』とは何なのか。
インタビュアー:
「その『作法』とは、どういったものなのでしょうか。」
西村先生:
「生きていく中では、『答えのない問題』に向き合う場面がたくさんあるじゃないですか。そういう時に、問題をどのように分解し、どのような手順で考えていくのか。たとえ答えがすぐには分からなくても、そのプロセスが適切でなければ、なかなか解決には近づけないんですよね。
問いの立て方がずれることもありますし、考える順序が違うだけで、たどり着く結果が変わることもあります。ですから、考えるプロセスそのものが身についているかどうかは、どのような場に行っても重要だと思います。
AIについても同じで、今は多くの人が使うようになり、答えらしきものはすぐに得られるようになりました。ただ、AIが出した答えを、本当に自分自身で理解し、自分のものにできているかというのは、また別の話ですよね。
答えがなかなか見つからず、悶々としたり、ストレスを感じたりしながらも、考え続ける力も同時に大切だと思うんです。時間をかけて、自分なりの答えにたどり着ける人と、そうでない人との間には、長い目で見ると大きな差が生まれてくるのではないかと思います。」
5. 商学の知識が「生きている」と気づく瞬間
インタビュアー:
「今日一日を体感されて、学生さんがここで得られそうなものがあれば、教えていただけますか。」
西村先生:
「うちの学生たちにとって、こうした中小企業支援の現場にお邪魔することは、とても勉強になると思いますし、相性も良いのではないかと感じています。商学を学んでいても、自分たちが学んでいることが、実際の現場でどのように生かされているのかは、なかなか見えにくいと思うんです。
マーケティングも、教科書や資料の上だけで学んでいると、実際にどのように使われているのかまでは分かりにくいですし、会計や戦略についても同じだと思います。人と人との関係をどうつくり、対話や協働をどう促していくかということは、なおさらイメージが難しい。
たとえば、ファシリテーションについて、授業の中で説明したり、体験的に学んでもらったりすることもあります。ただ、学生たちにとっては、なぜそれが大切なのかを、まだ実感しにくい部分があると思うんです。そのため、表面的な理解や、手順やテクニックの理解にとどまりがちです。
でも、実際に社長とお話しする場を見れば、ファシリテーションがなぜ必要で、どのように生かされているのかを実感できると思うんです。手順やテクニックだけではなく、その背景には、相手や場の状況を見ながら関わり方を考える、目に見えない配慮がある。そうしたところまで含めて、現場で求められる水準を体験として理解できると思います。」
インタビュアー:
「学んだものが現場でどう生きているかを肌で知ることで、学びへの意欲も高まっていく、ということですね。」
西村先生:
「学内での実践には、失敗してもやり直せる安全な環境で学べるという意味があります。一方で、学生たち自身もそれが授業の中での実践だと分かっているからこそ、どうしても当事者意識や緊張感を持ちにくい部分もあるんですよね。
だからこそ、実際に課題を抱えている方を目の前にした時の緊張感は、まったく違うと思うんです。実は、横浜商科大学には、中小企業の事業を継ぐ立場にある学生や、いわゆる二代目の学生も比較的多く来ているんですよ。」
インタビュアー:
「2代目の学生さんであれば、なおさら『自分ごと』としてリアルに考えられますよね。」
西村先生:
「そうですね。社長さんが抱えている悩みは、学生にとっても比較的身近な大きさで、その具体像を捉えやすいのではないかと思います。
大企業の話になると、扱う規模が大きく、学生にはなかなか実感を持ちにくいこともあります。その点、中小企業の場合は、実際に悩みを抱えている社長さんが目の前にいらっしゃって、その方のお話を伺いながら、一緒に考えることができます。
学生にとっても、自分たちなりに課題に向き合えるという意味で、とても学びの多い環境だと思います。」

社長の顔が見える距離だからこそ、学生の中に「自分の関わりが、会社を動かしている」という手触り感が芽生えていく。
6. 地元に残ることは、案外悪くない選択肢かもしれない
フォーバルが掲げるビジョンのひとつに人材の「地産地消」がある。地元の若者が地元企業に入り、その会社を内側から良くしていく。フォーバルが目指すこの地域社会の実現について、先生はどう見ているのだろうか。
インタビュアー:
「横浜商科大学の学生さんは、やはり地元・神奈川出身の方が多いのでしょうか。」
西村先生:
「一番多いのはやはり神奈川ですね。あとは静岡や東京など少し離れたところからも来ていますが、基本的には近隣が多いですね。」
インタビュアー:
「フォーバルの掲げる、人材の地産地消、つまり『地元の若者が地元に残って実力を発揮する』という地域社会の実現について、率直なご意見をいただけますか。」
西村先生:
「少し角度は違いますが、文部科学省でも今、都市と地方の連携を通じた『国内留学』を促進する事業が始まっています。都市部の学生に地方へ行ってもらい、地域で多様な経験をし、地域との関わりを持つ機会を広げようとしているんですね。
そうした経験を通じて地域とのつながりが生まれ、将来的に、その地域で力を発揮する一つのきっかけにもなり得る。都市と地方の人材交流や循環を生み出していくことは、国としても重視されている流れだと思います。
ただ、国や地域がそうしたことを期待しているからといって、学生が地域で働くことを選ぶとは限りません。実際に就職するとなれば、できるだけ条件の良い会社で働きたいという気持ちは、学生にも当然あると思うんですよね。
だからこそ、中小企業の現場を実際に知る機会が大切なのだと思います。現場に入ってみることで、『ここなら自分もいろいろなことに携われる』『自分の働きが会社の成果につながっていることを、手触り感をもって感じられる』と気づく学生もいると思います。
大企業では、組織の規模が大きい分、自分の役割や仕事の影響が見えにくいこともありますから。中小企業では役割の幅が広く、仕組みにも工夫の余地があるからこそ、自分なりに考えて動き、力を発揮できる学生もいるでしょう。
何か一つきっかけをつかむことで、『地元に残って、この会社をもっと成長させていこう』と考える学生が出てきても、おかしくないと思います。そういう意味で、『人材の地産地消』という考え方には、十分な可能性があると思います。」
「手触り感」——この言葉は、中小企業がもつ活躍の場としての可能性を、よく表していた。
インタビュアー:
「大企業にないものも、中小企業だからこそある魅力も、しっかり可視化していければ興味を持つ学生も出てくるかもしれませんね。」
西村先生:
「今の学生を見ていると、傾向として、激しい競争の中に身を置くことを積極的に求める学生ばかりではないと感じます。もちろん、競争的な環境を好む学生はそういう道に進めばいいですし、それはそれで一つの選択だと思うんです。
ただ、競争の激しい大企業に入って、無理を重ねた結果、2年、3年で辞めてしまうよりも、中小企業ならではの魅力を知ることで、自分の居場所だと感じられる会社に出会う。そうしたきっかけをつかむことも、一つの選択肢としてあっていいのではないかと思いますね。」
7. 「武者修行」がキャリアを変える——民間企業・大学連携のこれからの可能性
最後に、大学とフォーバルの今後の連携について聞いた。
インタビュアー:
「今後こういう連携関係になっていければというリクエストがあれば、ぜひいただけると嬉しいです。」
西村先生:
「商学という分野は、机の上だけで完結するものではありませんし、一つの数字や一つの立場だけを見るのではなく、それぞれの立場や、その選択によって生じる影響を多面的に考える必要があると思います。
そうした考え方は、教室で知識を学ぶだけでなく、実際の現場に触れ、そこで起きていることを自分の目で見ることで、より深く理解できるのだと思っています。
今日一日ご一緒させていただいて、中小企業の社長さんに寄り添い、伴走しながら支援されている場面を拝見した時に、「うちの学生にとって、こういう経験はすごく貴重だな。ぜひ経験してほしいな」と素直に思いました。
学生がこうした現場に触れられる機会が、今後さらに増えていくといいなと思っています。
まだ思いつきの段階ではあるんですが、たとえば定期的なインターンシップのような形で、1週間から1か月ほど、学生が「武者修行」のように実際の現場に入って学ぶ機会があっても面白いですよね。
そうした経験を通して、教室で学んでいることが現場でどのように生かされているのかを、実感してもらえたらと思います。」
現在の制度やカリキュラムだけではなく、手触り感のある現場を体で覚える。
この生きた学びの場でこそ、地域の未来を創る人材が育っていくのではないだろうか。
取材にご協力いただいた大学
横浜商科大学
所在地:神奈川県横浜市鶴見区
公式サイト:https://www.shodai.ac.jp/
フォーバルについて
株式会社フォーバルは、「新しいあたりまえ」で新しい世界を創ることをミッションに掲げる企業です。中小企業に専任の「企業ドクター」が長期的に伴走し、経営課題の解決を支援しています。現在、大学との産学連携にも積極的に取り組んでおり、学生が実際の中小企業支援の現場で学べる機会づくりを進めています。